境界性パーソナリティ障害と夢

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ノイマンによれば、蛇は、秩序や文化にたいする混沌や原初的な自然を表すものと考えられるそうです しかし、同時に蛇は、女性にたいする異性――つまり「男なるもの」を意味します。(詳しくはノイマンの『意識の起源史』をご覧ください。) 勿論、場合によっては、蛇が男性の魂にとっての異性、即ち「女なるもの」を表す事もあります。 男性にとっての異性としての「大蛇」は、例えば昔話における普遍的なパターン(つまり、人間の魂の元型的イメージ)である「男性の英雄による竜退治」に明確に示されています。 フロイト派やラカン派の主張する「エディプス・コンプレックス理論」は、ユング派ではこの「竜退治」により理解されます。 夏子さんの夢に現れる大蛇は、女性の心が心理学的な本当の「自立」を成し遂げようとする際に立ち向かわねばならない「内なる異性」、つまり男性的な魂を表しているのではないか、と考えられます。 夏子さんはある事情で、それまで充分に向かい合って来なかった伴侶と向かい合わざるを得なくなってから、もともとの境界性パーソナリティ障害の精神病理が一気に花開いたのでした。 続く。
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