荒神

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荒神

優駿(ゆうしゅん)の風 切り裂く蹄(ひづめ)の 彼方(かなた)遠く地鳴り響き 舞い上がる土壌 大地は目覚め 身を翻(ひるがえ)し 溢れる生命の息吹に震える 深い闇の谷間の奥へ 僅(わず)かに差す光のように 突き刺さる裏切りを 胸に抱き祈る夜 駆け上がった 断崖の上で 嘶(いなな)く夢の塵屑(ちりくず)を 踏みつけて 何度でも 償いなど煩(わずら)わしい芥(あくた) 残雪 土混じり濁(にご)る 手に取れば溶けて消える 砂礫(すなつぶて)だけが存在の証 強まる風 気高い鬣(たてがみ) 靡(なび)く首にはいくつもの裂傷 潜在の意図 誰が知り得ようか この身すら欺(あざむ)いてきた心根を 撃ち抜く永遠 荒野に あてもなく 流離(さすら)う
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