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日課の訓練を終えたバッシュは家へと戻る。
扉を開け、中に入ると部屋の中央ににある食卓に朝御飯が用意されていた。
そして更に奥にあるキッチンから声がかかる。
「おはよう。今日も朝からご苦労様。ご飯できてるわよ。しっかり食べるのよ」
母親のネーナ・カノンが手に水の入ったコップを持ちながらやって来た。
「ありがと。母さん」
訓練でかいた汗を拭いながらコップを受け取り一気に飲み干す。
この家にバッシュはネーナと二人で暮らしていた。
父親は騎士団員だったが、バッシュが3歳の頃、魔物討伐任務の際、敵前逃亡し、以来行方不明だ。
騎士としては最大の不名誉でもあるこの事件は当時の王国においても結構な話題となり、
仲間を見捨てた卑怯者
騎士の栄誉を汚した不忠者
と散々に罵られた。
残されたバッシュ逹にも当然に火の粉は飛んだ。その為、当時は街中すら満足に歩けなかった程だ。何せ歩いているだけでゴミや石が平気で投げつけられる程だったのだから。
今でこそ落ち着いてはいるが、当時幼かった彼にはあまりにも酷い仕打ちだった。
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