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事件のあらましは至って単純、しかして不可解であった。
昨晩遅く深夜過ぎ、警察宛てに一本の電話があった。
『町外れの廃工場に怪我をしている男達がいる。保護してほしい』との内容の電話であった。通報者は名乗らず、またくぐもった声音であったために性別や年齢はわからなかった。電話は廃工場近くの公衆電話からだったことがわかっている。
夜勤の警官が実際に駆け付けると──そこには、生々しい打撲の傷を負い気絶して、バイクの残骸と共に古びたアスファルトの上に転がる少年らがいた。
当然、警官は彼らを保護。全員打撲、悪くて骨折程度の傷を負っていたため、病院へと搬送された──問題は、ここからだった。
警官が彼らの素性やバイクのナンバー、持ち物などを確認した結果、様々な事柄が浮かび上がった。
彼らは近頃、市内で数多く非行を繰り広げ、通報を受けていた札付きの不良だったのだ。
民家公共施設問わずに窓を割り、壁に悪趣味なペイントを施し、自販機の破壊、車上荒らしなどなんでもござれ。果てには荷物から違法な薬物──
高校生から大学生まで歳が別れるその9人は、意識を取り戻すと同時に、警官による取り調べをうけることとなったのだった。
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