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「──そして、彼らの話によると……昨夜ここに集まっていた彼らに暴行を加えた人物達は、たった二人だったそうです。
それぞれ金属バットと木刀を持ったその二人は突如現れ、9人を叩きのめし、バイクを破壊し……おそらくは、通報したのだと思われます」
警官は場に残されていたという、その二人が残したと思われる物品を男に手渡した。鑑識に通すつもりなのか、袋に入れられている。
「……面白くねぇ話だ」
男は詳しい事の顛末を理解すると同時、その品を目にして、むなくそ悪そうに、目元を最大級に釣り上げた。
その「二人」は、非行少年たちの持ち物を撒き散らしていっただけで、何も持っていきはしなかったという。窃盗目的では無いということだ。
また、9人は全員怪我を負ったものの、後遺症が残るような重症を負った者は一人もいない。全員悪くて指や手足の骨折のみで、命になんら別状は無い。
聞けば、金属バットは最初から、幾重にか厚めに布が巻き付けてあったそうだ──まるで、意図的に致命傷を避けるように。
そして、この残された品のメッセージ。
つまりは、彼らの目的は──
「……悪ガキ共を懲らしめて、俺達に捕まえさせることだった、ってことか……」
……義賊気取りのバカが。
男は益々不機嫌になり、唾を吐き捨てた。
手渡された袋の中。彼らがその場に残したという品。
獅子が描かれたプラスチックのカードには、太字の黒マジックで、一言だけ記されていた。
乱雑な字体で「天誅」と。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇◇
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