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◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「かーっ、食った食った!」
自分の奢りで腹を満たして、ひゃひゃひゃ、と満足げに笑いながら隣を歩く友人を横目で見て、燕は大きなため息を吐いた。
随分と軽くなってしまった財布をポケットに感じながら、恨めしげに口を開く。
「…お前さ、もう少し情ってもんが無いのかよ?身寄りも無くアルバイトで小遣い稼いで生計を立ててる哀れな男子高校生の財布にたかって、少しは罪悪感を覚えないのか?」
「はァ?ザイアクカン?わりィがそんな面倒なモン、オレの辞書には存在しねーなぁ」
相も変わらず楽しげに笑う友人の姿に、全くこいつは…と小さく呟く。
確かに、罪悪感やら反省やら後悔などといった言葉と、この友人の性格は最も遠くかけ離れている。
過去を振り返らず、自分の思う最善、最も自分流の道理に適(かな)った道を進む。後悔する暇があるなら、明日のために早く寝ちまえ。
それが友人の持ち論であった。
適当なのか、潔(いさぎよ)いのか。微妙なところではあるが。
「それに、オマエの言い草に言いたいことはまだあるね。
まず、今日のは屋上で寝てオレを三十分も待たせたオマエが悪い」
「……まぁ、そうだけどさ……」
「それに、身寄りが無くてアルバイトで生計を立ててる哀れな高校生──ってトコはオレも同じだしな。違うのは男子高校生、ってところだけだろ?」
端正な顔をニヤニヤと笑ませ、彼女は言い放った。
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