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「やぁ、そっちの調子はどうだい。今回は、良い“駒”が揃いそうかな?」
「彼」はゆるやかなリラックスした声色で話し掛け、また一口缶ジュースを口にする。
「新規参加者は順調に集まっております。それに、この町は楽しい町です…なかなか興味深い人間が多いですね」
対して、白色は答える──その言葉と裏腹に、口調はどこか無機質であった。まるで、ひどく透明で輪郭線しか掴めないガラスの塊のように。
「へぇ。そっか…楽しみだネ。今回も…退屈しなくて済みそうだ」
「彼」は嬉しそうに呟き、また目線を希薄な世界へと向けた。その口元には、ただ少年のような無邪気な笑みだけを浮かべて。
違和感を覚えさせる、どこか空虚な街。高所から見る遠方の景色は、不可思議な色合いに儚げに霞んでいる。
いつの間にか、日は沈み切っていた。
まるで作り物──舞台のような世界を、単調な白から赤、そして黒へと変わり行く空に浮かんだ、大小二つの月が幻想的に照らしていた。
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