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七、八人も居た悪友らが次々に殴り倒されていくのを、男は腰を抜かし、壁際にへたりこむようにして見ていた。
武器を持っているのだから、殴る、という表現は適切ではないのかもしれない。
相手は何人だ──その余りの勢いに、自分の認識を疑う。
たったの、二人。
自分たち十人近いグループに、相手はたった二人で襲い掛かったのだ。その事実を再認識し、改めて目を剥いた。
二人とも深くフードを被っており、人相は掴めない。
一人は、やや小柄な体格。だがひどく豪快な動きで恐れなく集団の中へ飛び込み、自らの得物──金属バットだ。致命打を防ぐためだろう、先から中間に向け幾重にか、ぶ厚めに布が巻き付けてある──を派手に振るっている。
そのバットには凄まじいまでの力が加わっているのが見ていてわかった。胴や背に食らった彼の仲間はほぼ一撃で倒れこんでいる。
中には、キレてナイフや落ちていた鉄パイプを手にしている者もいる。それにも関わらず、金属バットのフードは一瞬たりとも物怖じしない。なんという度胸だろう。
その姿は例えるなら、野性の獣のようだ。
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