プロローグという名の姉晒し

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なっちゃったのだ。まんまの意味で。 まんまの意味というと変身するのか、と言われるとそうではない。 心と行動がヒーローの行動理念とシンクロしちったのだ。心はヒーローってんなら別にいてもおかしくないかもしれない。 だが行動がヒーローはまずい。ねーちゃんはもう19だ。社会がどういう空気なのか、何が惹けて何が引かれるのか、もう分かってもいい歳なのに、丸っきり分かっていなかった。 故に周りを引きに引かせまくった。武勇伝をあげたらキリがないってか、武勇伝を箇条書きにして表せと言われたら、多分腱鞘炎になる。盛ったけど。 というか、ねーちゃんにそれを言ったら、「腱鞘炎って何?」 俺はねーちゃんに辞書をぶん投げた。厚い厚い国語辞典をぶん投げた。 それをねーちゃんは片手で受け止め、「こんな厚い本は読めないよ」と。 俺は思った。ああ、ねーちゃんはやはりバカだ。真のバカは分からない語句に対して辞書を引く権利すら与えられてないのか。 俺は自分の筋力の無さと、ねーちゃんの将来に身震いした。 こんな空気ぶち壊し、頭残念なねーちゃんでも高校には行っている。ちなみに現在進行系。19で高校。ねーちゃんは卒業が出来なかった。 そりゃそうだ。ねーちゃんの学力を受け入れる学校はそう多くないが、無いわけではなかった。そこにいれば卒業出来たかどうかは知らんが、ねーちゃんはバカだから俺が高校に入った途端、俺の高校に転入してきた。理由は俺が非行に走らないように。親はねーちゃんの学校のランクアップを喜んだ。俺は胃に穴が空いた。 俺の高校は中堅私立。出来ちゃうやつと出来ないやつが混在するものの、目立つ程のやつはいない。そんな勉学に関しては波風立たない、平和な学校だった。だが、ねーちゃんのような真性バカを受け入れるような学校ではないのは確かだった。 だがねーちゃんは入ってきた。 ねーちゃんにはずば抜けた運動神経が備わっていた。ずば抜け過ぎていて、超人のように崇められ、高校はどこも欲しがった。しかしねーちゃんはバカだから中3の時、スポーツ推薦を得るためのスポーツテストに行かず、普通に受験。ねーちゃんクラスの頭脳が集うワケの分からない学校にめでたく入学。 俺を含め、ねーちゃんを除いた家族全員はワケが分からな過ぎて黙った。
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