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話は戻るが、ねーちゃんは俺の今いる高校にヨユーで入学している。いくら運動神経が良いと言っても、一応形式として入学試験を受けたがマークテストのため神に愛されたねーちゃんは問題文をロクに理解してないくせに、そこそこの点数をとったらしい。くそっ!
そしてねーちゃんは今や赤い髪を清純な黒髪のカツラで覆い隠され「赤髪のカツラだぞー」と騙されながら(髪は赤くないとダメらしい)試合に出る運動部の――というか、学校の頭おかしいヒーローとして君臨してますとさ、ちゃんちゃん。ねーちゃん以外の誰か助けて。
現在ねーちゃんは高校3年生(留年1)。俺は高校2年生。
この学校はまともなので、ねーちゃんの極端改革は起こっていないが、ちょくちょく改心活動は見られる。学校が知らぬうちに綺麗になっていく様が正直、気持ち悪い。
夏真っ盛りとは行かないが、セミがぼちぼちミンミンやってる7月10日の金曜日、昼休み。
俺はある女の子――同じクラスの甲斐春まわる(カイハルマワル)に体育館裏の薄暗いじめじめしたとこに、呼び出された。
体育館裏→不良にボコボコ。みたいな考えが条件反射的に頭をよぎったが、そこは健全な高校生。女の子に呼ばれちったら罠だろーが行くしかないっしょと、へこへこ行くと意外や意外でまわる氏が1人。
妙なねーちゃんがいるので弟の俺を人質に、な経験は少なくはないので色々と危惧したが待ち構えていたのは、おにゃのこ1人。
甲斐春まわる。
小柄で小動物(ハムスターあたり)と形容するに相応しい外見にたれ目でほえほえしてるが、ちょっぴり気が強い女の子なので、たれ目が妖艶に見える。そして髪色は色素の薄い茶色。
体育館裏+おにゃのこ。
やっべーっ! これは良からぬ妄想が止まらねえよ!
「あ……あのさ」
甲斐春さんが口を開く。
「弟くんのお姉さんのことなんだけど……」
ちなみに弟くんと言うのは俺のあだ名だ。ねーちゃんが有名過ぎて、俺は弟などというワケの分からんあだ名をつけられている。
というか、そう来たか。またねーちゃん。ねーちゃんは誰彼構わず、自分の正義に則り、人を助けたりのヒーロー活動を行うので、その弟である俺を伝言役に使う、なんてのは珍しいことではない。甲斐春さんも大方その辺だろうか。
「今、噂になっていることって本当?」
ああ、そっちか。全く……ねーちゃんは面倒事しか持ってこない。
だからヒーローとか嫌いなんだ。
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