episode.0 1996年

4/7
21人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
自分の声が届いたのかはわからない… ただ、“仲間”にメッセージを伝える事は出来た。 三枝美希に複雑な感情が生まれる… 怪獣は生きていてくれた。嬉しい筈だった。 だが美希の目から涙が流れる。 美希は泣きながら、ヘリから怪獣を見下ろしていた。 「美希…」 傍にいた小沢芽留が美希を抱きしめる。 美希は感情が爆発したかの様に泣き始める… 「…ア… ジュニア…ジュニア…!!」 これが本当の別れになる。そう思うと泣けて来るのだ。 怪獣と心を通わせる力も無くなる… 美希はただ泣くしかなかった… 「美希!! 美希見て!!」 芽留の声で美希は泣き止み、ヘリの下を見た。 …美希が見たのは、ヘリを見上げる…ジュニアの姿だった。 傷は完全に完治している。 美希はジュニアの目を見る。感じ取ったのは何の敵意もない、彼女に対する感謝の視線だ。 「美希の声、伝わったみたいね…」 その時、ジュニアは口から青白い熱線を空に向けて放つ。 熱線で2人は驚いた。 「…もう!!大きくなっても子供なんだから!!」 美希に笑顔が戻る。 ジュニアは、雄叫びを上げる。それは自分の成長をアピールしている様だ。 そしてジュニアは、背中を美希達に向けゆっくりと歩き出す。 「ジュニア、“頑張る”って…」 ジュニアのメッセージを感じ取ったのか、美希はそれを芽留に伝えた。 「ジュニアなら大丈夫よ…」 芽留と美希はジュニアを見る。 今までの思い出を振り返りながら、美希はジュニアを見つめる…。 美希は願った。 またジュニアと会える日を… そして、ジュニアの別れのメッセージを送った…
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!