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「フランツ、もう夕方だよ。起きて」
ミラーノは幼なじみをゆすり起こした。フランツがゆっくり体を起こす。いつも夕方には、皇子は祖国へ帰ることになっていた。
「…帰りたくない」いつもの気丈な幼なじみには似合わない弱気な言葉だった。
「もう少し、ここにいちゃ駄目か…?」
「もうすぐお掃除のメイドが来るの。今の内に帰れるなら、帰った方が良いかも」ミラーノはフランツの言葉に戸惑いながらもはっきりと提案した。
「…分かった。今日は帰る」物分かりが良いのが、フランツの長所だった。
「ごめんなさい…また今度ゆっくり話そ」ミラーノは詫びた。
「また来てくれて良いからね」
フランツはうなずいた。その顔には影が差していた。
心なしか顔色も良くないように見える。
「気分悪いの?大丈夫?」
ミラーノが気遣う。フランツはまたうなずいたが、明らかに様子が違っていた。
ミラーノは、嫌がるフランツを無理矢理ベッドの上に押さえつけ、その額に手を置いた。「熱はないみたいだね」
フランツの息が少し荒くなった。勢い良く起き上がり、部屋の外に出ようとするが、足元がおぼついて前につんのめる。
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