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「はい
どうぞ」
─いきなり
目の前に差し出された花束
かなり豪華な
菊の花
これがバラの花束なら
なかなかロマンチックなんだけど…
無理だよね
流石に…
だって
ここは霊園だもの…
そんな風に思いながら
花束を差し出した人を見た
子供みたいな
無邪気な笑顔の男の子
私と目が合うと
嬉しそうに目を細めて笑った
「どうぞ」
“早く受け取って”と言わんばかりに花束を振る
『…何故
私に?』
当然の質問をする
「だって
お墓参りだってのに
お姉さん、お花持ってないからです」
お、お姉さん!?
「お花…
忘れちゃったんでしょ?」
「あげます」
………
『いや、でも
貴男のが無くなるでしょ?』
私が言うと
その子は更ににっこり笑った
「いいんです」
「はい」
「貴女の
大切な人に」
………
『…ど、どうも
ありがとう』
「いいえ」
「じゃ」
男の子は
軽く手を上げて、踵を返した
………
な、何なの?
何で私に花束…
私は去りゆく
その子の後ろ姿と花束を代わる代わる見つめた
………
…この花束
高そう…
立派な大輪の菊の花が
抱える程…
…いいのかな
貰っちゃって…
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