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ピンポーン
恭介はバイクを駆り、ある家の前までやって来た。
インターホンを押して約5秒後、"その人物"はドアを開けた。
「どちら様?あぁ、さっきの子かい?さっき悲鳴が聞こえたけど、何かあったのかい?」
「はい、商店街が…怪物に襲われました…」
「なんだって!?」
恭介が訪ねたのは、先程会った南柏花大通沿いに住む女性。
「ここの辺り、騒音は酷かったんですか?」
「まぁね…電車の往来は多いし、そこの大通りは夜になっても車が多いもんだから…
ついでにいうと、近くに高速道路が走ってるでしょ?だから排気ガスもすごくてさ…でもここらの住民はみんな諦めてるよ…
となりのお爺さんを除いてね…」
「……。そのお爺さん、今どこに?」
「この前、町内会の温泉旅行に行ったはずなんだけど、たった1日で帰ってきたみたいでねぇ…
今はたぶん散歩に行ってると思うよ」
「わかりました、ありがとうございます」
恭介はゆっくりドアを閉めた。
すると、ちょうどそのお爺さんが散歩から帰ってきた。
「おぉ、君はさっきの…お茶でもどうじゃ?さ、上がって上がって」
「はい、お願いします…」
お爺さんは温かく恭介を迎えてくれた。
「はい、お茶どうぞ…お菓子は和菓子で大丈夫かい?」
「えぇ、お構い無く」
部屋の中に、お茶をすする音が響き渡る。
暫くして、沈黙が訪れる。
その沈黙を、恭介が破った。
「あの…この辺り、ずいぶん静かになりましたね」
「ああ、そうじゃな…電車も車も通らない、その上商店街の耳障りな声も聞こえない!!実に快適じゃ」
「この快適な環境を得るために、"あなたが壊したんですね"?」
「!?」
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