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テイルは急いで家を出た。
これは逃亡ではなく、他人の家を戦闘で破壊するのはドールとやっていることが同じだというテイルの正義感からの行動だ。
それとは裏腹に、ドールは家の窓を大胆に突き破りテイルを追う。
テイルが足を止めたのは、崩壊した商店街跡。
これもまた、人を、町を出来るだけ傷つけたくないという気持ちから。
『もう逃げるのを諦めたのか?最近の若いもんは根気が足りんのう…』
背中を向け立ち止まるテイルを、野球のバットでボールを打つように、金棒で振り抜こうとする。
「逃げる?ふざけんな!!」
『うおっ!?』
カウンターの要領で、迫り来るドールに強力な回し蹴りが炸裂する。
その勢いで、ドールは吹き飛ぶ。
「かは…やっちまった…」
ドサッ
地面にうつ伏せに倒れたのは、金棒が直撃したことでベルトが外れ変身が解除された恭介だった。
『フン、今のは驚いたわい…金棒を落としてしもうたわ。なかなかの蹴りじゃな』
「ゲホッ…」
ドールは蹴りを喰らいながらも、すぐ立ち上がり恭介に一歩一歩近づく。
『生身の小僧ならば、金棒でなくともこの拳一発で沈めることは容易いじゃろ…』
「まずい…う…重…」
身の危険を感じ、ドールが落とした金棒で攻撃を防ごうとする。
しかし…金棒はとてつもなく重く、攻撃を防ぐのはおろか、持ち上げることも儘ならなかった。
『生身の小僧にその金棒は扱うことはできん。いや、持ち上げることもできんじゃろう』
「く…おお…」
一歩ずつ、ゆっくりとドールが恭介に迫る。
その足音が、より緊迫感を演出する。
『消えろ小僧!!』
「負けるかぁあ!!うぉああああありゃあああああ!!!」
ズッ…
『何!?こやつ、金棒を持ち上げ…ごぁっ!?』
恭介の意地で発揮された"火事場の馬鹿力"は、金棒を持ち上げた。
そのまま遠心力を利用して金棒をドールにぶつけた。
当たったあとは重みに耐えきれず、金棒は恭介の手から離れてドールの元に飛んでいった。
「ふ…へへ…何とか助かったな…あ、バックルどこいった!?
あ、あったあった!よし…
変身!!」
テイルバックルは足元に落ちていた。
それを再び腰につけ、変身した。
【CHANGING CAT】
現れた本の形状をしたエネルギー塊、"トランステイルブッカー"のページを通り抜け、装甲を身に付けた。
『おのれ…猫がぁあ!!』
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