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ーーーー……その日から、丸五年経ったある日。
「にーさま、にーさまァー!!」
栗色の髪の毛をショートヘアーにした小さな少女が、自分の兄である、自室で本を読み耽る黒い長めの髪の毛に灰色の瞳を宿した少年ーーーーあの雪の降る夜に生を受けた少年、ウツロに飛び付いた。
「……シロナ……」
パタリと本を閉じた少年は、端正に整った顔を自分の妹に向け、小さくその名を呟いた。
「……シロナ、何か用か……?」
「えっとね、とーさまが呼んでるの。今日はにーさま、誕生日だからプレゼントの話だよっ!!」
無邪気に笑顔を見せる妹の顔を見て、彼は淡い微笑みを見た後……ゆっくりと瞳を閉じて、心の中で呟いた。
「(……そうか。遂に……奴が、俺を捨てるのか)」
そして再び眼を開き、何も知らずに微笑む妹の頭を撫でてやりながら……彼は、別れを感じさせずに語りかけた。
「……わかった。良い子にしてるんだぞ、シロナ」
「うんっ、にーさま!!」
そしてそのまま妹を残して自室を出て、彼は捨てられに行く。自らの父に。
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