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「坊っちゃん」
部屋を出た瞬間、銀色の髪をしたメイド長ーーーーあの日、母から彼を取り上げた、メイド長のフィーロが声をかけてきた。
「……フィーロ、何か用か……?」
「……坊っちゃん。私は貴方様と共に過ごした今日までを忘れません。……どうか、お元気で」
その言葉に、彼は変わらない淡い微笑みを浮かべて、こう答えた。
「……フィーロ、俺もお前やシロナと一緒にいられて幸せだった。……俺がいなくなった後、シロナの事は頼んだぞ」
「……かしこまりました」
そして深く一礼したフィーロから視線を外し、彼は再び歩き出す。
余りにも堂々と、余りにも凛とした態度で、彼は運命に向き合う。
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