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重たく頑丈そうなの扉の前で、彼は立ち止まる。半ば癖になりかけている、ゆっくりとした意識した瞬きをした後、彼は数回扉をノックした。
「入れ」
即座に、冷たい返事が返ってきた。
「……失礼します」
彼はわかりきった返答だと、全く狼狽えずに重たい扉を開けて中に入る。
そして扉を閉めた瞬間、重たい拳が彼の頬を捉えた。
「っ……!!」
彼の華奢な肉体が閉めたばかりの扉にぶち当たる。口の中に、鉄臭い血の味が広がった。拳は、入口のすぐ近くに立っていた栗色の髪の毛を後ろに撫で付けた男ーーーー彼の、実の父のモノだった。
「……よく来たな。喜べ、ようやく貴様を消す事が出来る」
そう言った父を、彼は感情を込めない瞳で無表情に見つめた。
「……俺を、捨てるのですね」
彼は、返事のわかっている問いかけをした。
「あァそうだ。シロナの魔力測定も先日終了したしな」
父は笑う。楽しそうに、笑う。
「あの子は素晴らしいぞ、貴様と違ってな。魔力値が三歳であそこまでの数値の子供は見た事がない!!」
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