第一章 暮色

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明け方5時頃に目が覚める。私は重い頭で昨晩のことを思い出していた。 美しいリサのさまざまな表情。自らを抑えることのできない熱情。 夢のような夜だった。 しかしふと、脳裏にあの女の顔がよぎる。 彼女の華奢な肩が蘇る。 もういけない。ここを早く出て行かなければならない。 私はお礼の置き手紙を書いた。 「何も言わずに出て行ってごめんなさい。 昨日はお世話になりました。ありがとう。 また会えたらと思っています。      裕子」 本当は文面なんてこれだけでいいと思っていたけれど、書いていくうちに惜しくなり、追伸として連絡先を書いておいた。 隙だらけの寝顔に、そのなめらかな頬にふれて、私は後ろ髪をひかれる思いでその部屋を出て行った。 早朝の始発に乗る。 朝早い電車に、髪も服装もどこかよれよれな女子高生が乗っているのは、やはり朝帰りだと思われたようだ。 驚きの目や侮蔑の目を向けられながら、私は帰途についた。
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