第一章 暮色

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私の通う葉山女子学園高校は、中高一貫の女子校で、中堅私立としてはわりと名の知れた伝統校だった。 「懐かしいなぁ」 「カズミさんは何部だったんですか」 「私は茶道部だったよ」 彼女はそう言い、コーヒーをひとくち飲む。 そういえば、カップを手にとるしぐさが優雅かもしれない。 「裕紀ちゃんは?」 「美術部です」 「文化系なの。意外」 今度は私がカップを口に運んだ。 「私、高校時代はあんまりいい思い出なかったなぁ。 裕紀ちゃんは綺麗だから分からないかもしれないけどね。 ださかったり不細工だったりすると自然淘汰されるから」 「私も……」 そう言って口をつぐんだ。 思わず学校にいるときの私が出てしまいそうになったのだ。 「裕紀ちゃんは友達も多いでしょう。 合コンとかしてるグループに入ったりしてるんじゃない?」 「たまに誘われますけど、私は断ってますよ」 笑いながらそっと、自分を包むなにかをかけ直した。 嘘だった。 私は葉山で、地味で冴えなくておとなしい人間として生きるしかなかった。 綺麗なんて言われたこともなかった。ましてや合コンなんて程遠く、宇宙の果てほどに感じていたのだ。
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