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私の通う葉山女子学園高校は、中高一貫の女子校で、中堅私立としてはわりと名の知れた伝統校だった。
「懐かしいなぁ」
「カズミさんは何部だったんですか」
「私は茶道部だったよ」
彼女はそう言い、コーヒーをひとくち飲む。
そういえば、カップを手にとるしぐさが優雅かもしれない。
「裕紀ちゃんは?」
「美術部です」
「文化系なの。意外」
今度は私がカップを口に運んだ。
「私、高校時代はあんまりいい思い出なかったなぁ。
裕紀ちゃんは綺麗だから分からないかもしれないけどね。
ださかったり不細工だったりすると自然淘汰されるから」
「私も……」
そう言って口をつぐんだ。
思わず学校にいるときの私が出てしまいそうになったのだ。
「裕紀ちゃんは友達も多いでしょう。
合コンとかしてるグループに入ったりしてるんじゃない?」
「たまに誘われますけど、私は断ってますよ」
笑いながらそっと、自分を包むなにかをかけ直した。
嘘だった。
私は葉山で、地味で冴えなくておとなしい人間として生きるしかなかった。
綺麗なんて言われたこともなかった。ましてや合コンなんて程遠く、宇宙の果てほどに感じていたのだ。
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