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家の最寄り駅に着く頃には、既に7時を回っていた。
近所のスーパーに入ると、惣菜を適当に選ぶ。
この時間帯に制服でスーパーをうろうろしている女子高生なんていない。
私はどこへ行っても今ひとつ馴染んでいない。
無駄に明るくて、油の匂いが充満した惣菜コーナー。トングでイカリングをとっていた時だった。
「あら、裕子ちゃんじゃない」
背後から声がして振り返る。
懐かしくて思わず目を細めた。
小学校時代の友達、遠藤知佳の母親だったのだ。
「本当に久しぶりねぇ。学校は楽しい?」
「はい、とても。
知佳も元気ですか」
「ううん、そうねぇ」
遠藤おばさんは困ったように笑う。
「なにかあったんですか」
「よかったら、いつでも遊びに来てちょうだいね。
その時に知佳が話すでしょうし。週末なら必ず知佳は家にいるから」
「え、それって」
「じゃあまたね」
遠藤さんは愛想よく笑うと、レジへとカートを押していった。
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