第一章 暮色

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放課後の教室からは既に皆が立ち去っていた。 私は廊下に誰もいないのを確認してから窓を開け、携帯電話を掲げる。 我が校の、特にこの教室の窓から見える空は、どんな空より美しい。 とかく夕空の魅力は最大限に引き出せるロケーションだと思う。 私の携帯電話は、画素数も豊かな上にレスポンスも速いスライド式だ。 バッテリもよくもつし、唯一の難点と言えば携帯性の悪さだが、そう気になるものではない。 空の写真をホームページにアップすると、早速コメントが来る。 「この雲、きれいですね」 カズミさんからだった。今晩会う予定になっている、20代の女性。
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