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鳥の鳴き声で目が覚めた。
見慣れない天井が目に入る。
「……?あ、そっか。昨日は修練所に泊まったんだっけ」
ベッドの上で上体を起こしてみると、体中がギシギシと痛む。
おそらく、昨日普段使わない筋肉を酷使したせいだろう。
「…昨日……?」
昨日とは別の類の寒気がした。
逃げ惑うモンスター。
命乞いをするかのようにこちらを見つめる、つぶらな瞳。
事が終わった後に広がる血の海と、生温い毛皮の感触。
「…自分の意志でやったこととはいえ、さすがにちょっとやり過ぎ、た……ウッ、フ…ヒック…」
すすり泣きはやがて、号泣に変わっていった。
「わああぁぁ~!ごめんよニャティ~~!うおぉ~~ん…」
―なんだかんだ言って、結局は大の可愛いもの好きなのでした。
その頃、リデルさんはと言えば…
「…やはり私のせいか?『どんどん狩れ』と言って送り出した私が悪いのか……!?」
―少年の豹変ぶりに責任を感じるあまり、一睡も出来なかったようです。
隈できてますよー隈。
「いやしかし、時には心を無にすることも当然必要であって「わああぁぁ~!」……!?」
―少年の泣き声は、かなり離れたリデルさんのお部屋まで届きました。
「うおぉ~~ん……びぇぇえ~…!」
「…指揮官、辞めようかな…」
―数十分後…
「…おはようございます」
「!…起きたか…」
「はい。昨日は装備を取りにいく前に寝てしまって…すみませんでした」
「…いや、構わん。だいぶ長いこと体を使ったようだし、初日であれだけできれば上出来だ」
―ペコッ、と頭を下げた少年の目の輝きがもとに戻っているのをみて一安心したリデルさんは、落ち着きを取り戻しました。
「これが頭の装備だ。耐久度の心配はしばらくしなくていい。レベルもかなり上がったようだし、このまま森を抜けていけ。マップの開き方は分かってるな?」
「はい、大丈夫です。…ここから真っ直ぐ東ですね」
「うむ。そこの街で転職やらギルドやらの手解きをしてくれるだろうから、詳しいことはそこの指揮官に聞くといい」
「わかりました。短い間でしたけど、ありがとうございました」
「うむ。気をつけて行ってこい」
―こうして、リデルさんはまた一人冒険者を世に送り出しました。
ところで…あなたおいくつ?
「れでぃに歳を聞くもんじゃない」
―…失礼しました。
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