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「…母さん!そんなにいらないって。本当に大丈夫だから」
「でも、もしものことがあったら…」
「大丈夫だよ。ここら辺には人を傷つけられるようなモンスターはいないって、母さんもよくわかってるだろ?修練所に行くだけなのに、そんなにたくさん回復薬持って行ったら笑われちゃうよ」
「モンスターに襲われる心配をしてるんじゃないわよ。ただ…」
「ただ?」
「いつかみたいに、可愛いモンスターを追っかけて森で迷子になった挙げ句に崖から滑り落ちて全身擦りむいて大泣きして誰にも見つけてもらえず半日近くそのままになるような事を考えると、不安で」
「何年前の話だよ!てかそれ結構なトラウマになってんだからな!あんまし馬鹿にすると怒るぞ」
「いくつになっても息子は息子だもの」
「いやいや、そんな母性に満ちたセリフ言っても誤魔化せないからな。目が笑ってるし」
「もう、可愛くないわねぇ。長い冒険の旅にでる息子と母の感動の場面なのに」
「台無しにしたのはその母だろうが」
「全く…ほんとに、気をつけるのよ」
「…あぁ……」
「『あぁ』じゃないでしょ?」
「…はいはい。じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい。新しい町に着いたら手紙出すのよ」
「わかってるよ」
―こうして、少年は旅立って行きました。
いよいよ冒険が始まります…
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