すれ違いの恋

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 私は、私が嫌いで、別の人になりたかった。 台本、舞台の中で、別の人物になっている時が好きになった。 そして、私は、その仕事をしたいと思ったのだった。  今は、夏。七月の公演が今日終わり、今は、打ち上げの最中だ。 私は、二十歳を過ぎているので、少しお酒を飲んでいた。 まぁ、他の奴らが勧めるから、仕方なく飲んでいるのだが……。 そう言えば、譲たちと、もう、一年と四カ月になるのか……。 「おい、進んでないが、何か悩みごとか?」  すらっと背の高い男の人が栞に近づきながら声をかける。 栞は、その声に気がついて、その声の主を見る。 「ん?……あぁ、カズ。」 「打ち上げなのに、暗い顔なんてな。どうかしたのか?」 「別に……。」  昔から変わらない、数少ない口で言う。 あれからも、人とのかかわりは多くはない方だ。 そんな私につかづくモノ好きな男。 日野和幸。 栞と同じ年で役者を目指している。 「ほんと、お前は、役から外れると変わるな。」 「いつもの事だし、もう慣れたろ?」 「まぁな。」  専門に入ってから、一年ちょっと、和幸、通称カズとはクラスが一緒で、同じ授業を受け、同じ舞台に立ってきた。そして、よく役でからむことは多い。
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