1人が本棚に入れています
本棚に追加
私は、私が嫌いで、別の人になりたかった。
台本、舞台の中で、別の人物になっている時が好きになった。
そして、私は、その仕事をしたいと思ったのだった。
今は、夏。七月の公演が今日終わり、今は、打ち上げの最中だ。
私は、二十歳を過ぎているので、少しお酒を飲んでいた。
まぁ、他の奴らが勧めるから、仕方なく飲んでいるのだが……。
そう言えば、譲たちと、もう、一年と四カ月になるのか……。
「おい、進んでないが、何か悩みごとか?」
すらっと背の高い男の人が栞に近づきながら声をかける。
栞は、その声に気がついて、その声の主を見る。
「ん?……あぁ、カズ。」
「打ち上げなのに、暗い顔なんてな。どうかしたのか?」
「別に……。」
昔から変わらない、数少ない口で言う。
あれからも、人とのかかわりは多くはない方だ。
そんな私につかづくモノ好きな男。
日野和幸。
栞と同じ年で役者を目指している。
「ほんと、お前は、役から外れると変わるな。」
「いつもの事だし、もう慣れたろ?」
「まぁな。」
専門に入ってから、一年ちょっと、和幸、通称カズとはクラスが一緒で、同じ授業を受け、同じ舞台に立ってきた。そして、よく役でからむことは多い。
最初のコメントを投稿しよう!