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本当、今も昔も、私は、辛いことに縛られていたな……。
「はぁ……。」
「おまえ、やっぱり何かあっただろう?」
カズは、考え事をしていた栞をじっと見ていた。
そして、遙か遠くを見つめ、ため息をついた栞を見て、心配になった。
昔からと言っても、去年からの付き合いだが、こいつは、どこか、俺の知らない遠くで、想像もできないものを、背負っていたように思わせることがある。
一体何をしてきたのか知らないけど、最初は、同じ年だとは思わなかった。
なんというか雰囲気が、あまりにも大人びていて。
あまり感情がないように見えて、役に入り切ると、人変わるし……。
本当に謎が多い。
「だから、何もないって……。」
こいつは聞いても、何も語ってくれない。
自分の事も、今までの事も。
何一つとして。
それでも、俺はこいつの芝に居たいと思っちまう。
惹かれてやまないんだ。
本人は全く気が付いていないだろうけどな。
……そう言えば、今の歳は、あの異世界で、譲と望美に再会した歳か……。
髪も切ってないから、あの時の姿とまったく同じ……。
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