序章

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思考が危ない方向に行こうとした時、どこからか声がした。 (フフッ確かに、あんたの本はすごいよ。) 「ん?何だ」 顔を上げ辺りを見回す。 (これのすごさがわからないなんて下等生物だね。) 周りにあるのは無機質な家具のみ。 そして聞こえてくるものは声と言うよりも感覚に近かった。 「誰だ!どこに居る!」 (どこ?嫌だな~目の前に居るじゃないか) 「目の…前……?」 (そう、正確には心の目の前だがな) すると、暗い頭の中で『何か』がぼんやりと浮かんできた。 「……お前は誰なんだ?」 自分の中には自分以外いるはずがない。 なのに今目の前には得体の知れない『何か』がある。 (何を今更、失礼じゃないのかい?) 『何か』は段々とはっきりしてきた。 「失礼?」 (俺はお前だよ) 「俺?何を馬鹿な……」 頭に浮かんで来た『何か』は確かに『俺』だった。 しかしどこかが違う。 (フフッ、まぁそう思うのは自由だが。しかしお前の本は表現力もあるしサイコーだね) 「何を急に……」 (お前は俺だ、一番の理解者だ。 お前の事なら俺がよくわかる これはいい作品だ) 『俺』は落ち着いた声でゆっくりと優しく話す 「……そう思うか?」 (あぁそうさ。自然描写に力を入れてるのだろう?まるで目の前に自然が見える様な素晴らしい描写だったぞ) 紡がれる甘くて優しい声全てを忘れて眠りに落ちたくなる子守唄のような……。 「そうか?そうだよな……確かに俺は自然描写に力を入れてる。…そうか!わかってくれるんだな!」 (あぁさっきも言ったが俺はお前だ、よくわかる。そしてその文才もっと完璧にしたくはないか?お前を愚弄した奴らに復讐したくはないか?) 「……どういう意味だ?」 (そのままの意味だ、俺がお前に力を与えてやる。そしてお前をこれまでに愚弄してきた奴らに復讐するんだ。) 「……そんな事出来るのか?」 (クックッ、出来なかったら言わねぇよ。どうする?) 「……………」
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