♭1

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「水鏡 雹」 素直に答える辺り、先程の威勢の含む意味が言葉の中身とは違うのを伺わせる。 うん、小学生ユーザーを相手にするより楽だ。 「水鏡さんね」 「……なんで勝てない?」 「あ、姉貴のせいじゃねー!私が……その、……」 負の連鎖とはよく言ったもので、彼女の相棒のエリューニスが律に対する怒りと敗北の悲しみを混ぜ合わせて狼狽する。 律はそんなエリューニスの頭を指先で小突いた。 「なにしてんだよ!」 雹が騒ぐが、律は表情を尖らせてそれを黙らせた。 「その言葉、そのまま返させてもらうよ。神姫に何を言わせてるんだ?」 そのままの意味なのだが、彼女の口は一瞬だけ輪をえがいた。 「神姫は自らの可能な限界まで、オーナーの指示に従う」 「…………」 「戦い方を指示するのも、負けた時に反省するのも。オーナーの役目だ」 だから エリューニスに、 神姫に、 と、続けようと思った言葉は喉の奥に飲み込んだ。 .
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