71人が本棚に入れています
本棚に追加
「水鏡 雹」
素直に答える辺り、先程の威勢の含む意味が言葉の中身とは違うのを伺わせる。
うん、小学生ユーザーを相手にするより楽だ。
「水鏡さんね」
「……なんで勝てない?」
「あ、姉貴のせいじゃねー!私が……その、……」
負の連鎖とはよく言ったもので、彼女の相棒のエリューニスが律に対する怒りと敗北の悲しみを混ぜ合わせて狼狽する。
律はそんなエリューニスの頭を指先で小突いた。
「なにしてんだよ!」
雹が騒ぐが、律は表情を尖らせてそれを黙らせた。
「その言葉、そのまま返させてもらうよ。神姫に何を言わせてるんだ?」
そのままの意味なのだが、彼女の口は一瞬だけ輪をえがいた。
「神姫は自らの可能な限界まで、オーナーの指示に従う」
「…………」
「戦い方を指示するのも、負けた時に反省するのも。オーナーの役目だ」
だから
エリューニスに、
神姫に、
と、続けようと思った言葉は喉の奥に飲み込んだ。
.
最初のコメントを投稿しよう!