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朝8時。
時報だろうか?と思うくらい、正確にアパートのチャイムが鳴る。
一応、準備はできていたものの、ここまで正確に生きていると、息苦しいのではないか?と思ってしまう。
…時間にルーズではダメってことか?そういう職場?
ドアを開けるまでの一瞬のうちに、色々と考えてしまう。
悩んだところで、既に雇われた身。相手を待たせる訳にはいかない、と勢いよく玄関を開ける。
そこには、品のある50代の男性が立っていた。
「川口様でいらっしゃいますね?お迎えに上がりました。どうぞこちらへ。」
運転手というか、執事というか。
黒のスーツを纏い、白い手袋まではめた名も知らぬ彼に着いていくと、この辺の住宅街にはおよそ似つかわしくない黒塗りの高級車が道幅狭しと停めてあった。
…こんなところにこんな車って…。どんな金持ちなんだろう?
自分の環境との違いに戸惑いながらも、小走りで彼の後を追う。
車に乗り、渡されたのは一つの封筒。
「資料が入っております。お目通ししていただけますか?」
中には上質な紙で作られたパンフレットが数冊あった。
「…これ?」
首を傾げ不思議そうにそれを見つめる。
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