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窓の外を見つめる私をベッドに座る叶多は手招きをする。
両手を差し出し、私の指を絡め取る。
その手を口元へ運び唇を当てた。
何だかドキドキする。
何時もと違う部屋だからかもしれない。叶多の口から聞かされるであろう事実を知るからかもしれない。
どちらにしてもドキドキした。
「由依子さん」
「は、はい」
「明日、ちゃんと言うから」
「……」
「だから、さっきのやり直しがしたい」
「やり直し?」
「ちゃんと、大事に由依子さんを抱きたい」
「……」
「抱きたいんだ」
また一つ、思い出が増える。夕焼け色に染まる部屋の中で二つの熱が一つに溶け合う。どこまでも溶けて、このまま消えてしまいたい位の極上の幸せがあった。
もうこの際“片思いの女”がいようが、いまいが関係ないのかもしれない。
確かに愛された記憶があって、大事にされた温もりがあって、そうして人は次に繋げられるのかもしれない。
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