ぷろろーぐ

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――某所。 打ちっぱなしのコンクリートの壁が威圧するかのように彼女を囲んでいる。 窓はない。あるのは鉄製の机と一対の椅子、彼女を縛る手錠、そして見るからに頑丈そうな扉。殺風景過ぎる場所で彼女は虚空を眺めている。困惑も、焦りも……いかなる表情も彼女からは感じ取れない。 「――気持ちは決まったかしら?」 柔らかい女の声に彼女は頭を上げた。 机を挟んで彼女と対峙する女。 秘書、という言葉が良く似合うに違いない。皺一つないフォーマルなスーツ。黒縁の眼鏡は知的なイメージを持たせ、艶やかな黒髪は分けられた前髪を少し残して団子状に纏められている。派手ではない落ち着いた薄化粧は品の良さが伺える。 「貴女には時間がない。だからこれが最後。もう一度だけ言うわ……」 女の言葉を無表情まま彼女は聴く。 「ーー死にたくなければ“ヒーロー”になりなさい」 .
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