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「け…ご…?」
思わず彼の名前を口にしてしまう。それはきっと私の脳内で危険信号が流れたから。
景吾は何もないように眉一つ動かさない。そして一歩一歩着実に私へと近づいてくる足を止めようともしない。
顔を水滴が濡らす。
雨?いや、違う。だってここは屋内。
涙?いいや、もっともっと血の気が引くようなこの感覚。
「ちょっと景g…」
「刑務所にいる殺人犯だって一人目を殺す前は人殺しじゃない。追いつめられた人間はなにをするか分からない」
景吾は私の言葉を遮って、無に近い表情を見せた。私が、え?と声を漏らすと彼はやっと口角をあげ笑みを浮かべた。
「前に見た映画の台詞だ、………俺はお前がほしい」
そう言って押し倒される。
ああ、…
感じるのは微かな快感と
鼻を刺激するバラの香り
刑務所にいる殺人犯だって一人目を殺す前は人殺しじゃない。追いつめられた人間はなにをするか分からない。
映画 インサイドマンより
(あなたの香りに溺れてゆく…)
- END -
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