71人が本棚に入れています
本棚に追加
2、ひょうひょうとしていない彼
「・・・う゛ー。」手をつなぐと、照れて真っ赤な顔でうなる仁王。
いつもの帰り道
見慣れた景色は、もう見飽きた。
たった1つ違うと言えば…
「にお先輩、飲みます?」
持っていた温かい飲み物を差し出す相手が隣にいるっていうこと。彼はニコリと笑って いいから飲みんしゃい。 と呟く。
1つしか年が変わらないのに大人で、出会ったときから全てが憧れだった。
「…にお先輩って、」
不意に彼の手をとる。テニスでの荒々しい傷跡に思わず笑みを零してしまった。
普段はひょうひょうとしてるけど、裏では過酷な…………
「にお先輩?」
先輩に視線を向けると彼は私と反対側を向いて、必死で顔を隠していた。
「せーんぱい?」
「な、なん…じゃ…」
「……………もしかして照れてます?」
「てっ!照れとらん!!!!!」
「じゃあ、こっち向いてくださいよぉ」
先輩の腕をぐいっと引っ張ると、彼の少し紅潮した頬が目に入った。恥ずかしそうに悔しそうに眉をひそめ、前を見ている。
それは中学生らしい先輩の姿だった。
「ふふっ…先輩の好きなとこみーつけた」
先輩の指に自分の指を絡める。仁王先輩はビクリと反応したがそれに応えるように指を絡ませた。
「好きですよ、雅治先輩っ」
「…ゔー。お前さんには適わん…」
いつもの余裕なんてまるでない、
そのまんまの先輩も大好きですっ!
- END -
最初のコメントを投稿しよう!