71人が本棚に入れています
本棚に追加
3、大人じゃない彼
「…あかんわぁ」手をつなぎたくても、自分から行動を起こせないヘタレな白石。
「どうかしたん?」
隣の彼女が心配そうに俺の顔を覗き込む。端正な顔立ちやなぁ って改めて思うわ。
「………っや!なんでもないっ!」
両手をぶんぶん振って否定する。
言える訳ないやろ。
自分から行動起こせへん なんて。
<謙也は相変わらずヘタレやなぁ>
<ええか、財前!女っちゅーのはな…>
あんな熱弁しとった自分が恥ずかしいわ。
「…あかんわぁ」
あと数cmの距離がやけに遠くて、俺は人に言えんくらいヘタレやったことに気付く。
白石蔵之介は、大人で余裕があって更にはエクスタシーな男で通ってんねん!
女の子一人に戸惑うなんて一生の不覚や…
「…ねぇ」
ふと彼女が俺を呼んだ。彼女は不安そうに俺を見つめ泣きそうな小さな声を出した。
「なにがあったか知らんけど、いつでも話してな?話聞くぐらいしかできんけど」
あぁ、
これが中学3年生の恋愛ってもんとちゃうんやろうか、と思えた。
「………蔵?」
「…せやな。焦ったらあかんわ。ゆっくりゆっくり成長しよなっ!」
俺の一番大切な人が、彼女で良かった。
なぁ謙也…
ヘタレっちゅーのもたまにはええな。
- END -
最初のコメントを投稿しよう!