第一部 美代子 Side

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学校に向かう彼女達を、途中の道程(みちのり)の大きな大木の前で必ず待つ少年がいる。 「おーい!!」 畑が並ぶ一角に生え立つ大きな木下で、少年は二人の姿を確認すると、大きく手を振って自分の存在をアピールした。 彼は倉本真中(クラモトマナカ) 彼女達と同じ学校に通う中学三年生で、この村唯一の男子生徒。いつもこの三人は一緒に登校する事が日課となっている。 学校の全校生徒は6人。その内一人が一年生で、少人数という事もあってか、学年は違うが同じ教室で授業を一緒に行っている。 来年には五人が卒業してしまい、全校生徒はたったの一人になってしまうことから、2004年3月に閉校が決定した。 「真中は夏休みどうするの?」 「予定は未定だな。」 田舎暮らしの三人に、これといった予定はなかった。 「高見村での最後の夏休みだからねぇ。皆で夏休みを満喫できたら良いなぁ。」 寂しそうに七海が言った。 「来年には皆別々の高校だしね。ほんと寂しくなるよ。」 美代子も先の事を考え寂しい顔を見せる。高見村の三年生達は、来年、村を離れて高校の学生寮で生活する事になる。 高校では田舎の学校とは違い人数も多いだろう。新しい友達が出来ると今みたいな付き合いは無くなるかもしれない。
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