中退

5/19
前へ
/63ページ
次へ
(…んだこりゃ…) 訳が分からなかった いきなり布団に凄まじい量の 鮮血が広がっていたら 誰でも焦る (僕は怪我なんかしてない) 考えられるのは 妹… 考えたくなかった 明るくて むしろウザイくらいの 妹が… 「とにかく確かめねぇと」 妹の部屋は 廊下を挟んで向かいだ 勢いよくドアをあける 「なに?ノックもしないで着替え中なら…ちょっと!」 強引に 妹の上着を脱がそうとした あれだけの血だ 必ず傷がある そして 手首付近…見つけた! 鋭利な刃物で 幾重も線が刻んである 「リストカットね…」 「怒らないの?」 妹は脅えながら聞いてくる 「ごめん」 僕は情けない兄だ ここまで妹が追い詰められていたのに うざがるだけで 気づいてやれなかった 最低な兄だ 爪が食い込む程拳を握りしめ 手のひらから 血が滴り落ちる 「雄…お兄ちゃん…」 泣きながら麻夜が 飛び付いてくる 予想もしなかった まさか 妹が虐められているなんて ストレスで 綺麗な長い髪が 一夜で 20本も抜け落ちていたなんて でも そんななか 父さんと母さんに 心配させないように 笑って 必死に勉強して 僕にまで気遣い 生意気言ってたなんて 知りもしなかった 知ろうともしなかった 「気づいてほしかったんだろ?あれがお前のSOSだった訳だ…」 そう 妹はわざと血を始末しなかった その重圧を知った僕は 母ちゃんみたいに妹を抱き締めた 「暖かいよぉー」 妹は 麻夜は泣き続ける
/63ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加