幸せ

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「茜の仕返し、あんたがすればー?」 私は弓削くんの背中に言って。 私は少し乱れた髪をなおして、こっちを見る二人を見て、にっこりと笑ってみせる。 「いいよ。好きなだけ、好きなように」 「ユリっ!」 「いいじゃん、別に。茜の気が済むなら、なんでも」 「…だからっ、なんなのよ、あんたっ。思ってること、まったくわからないっ!」 「理解してくれなくていいよ。そんなの求めてもいない」 理解しようとされている。 わかっていて、私は突っぱねた。 私は弓削くんを見る。 弓削くんは私の頭の上をはたいた。 少し痛くて、でも、そんなもので終わりなのかと弓削くんを見る。 「いつか痛い目にあうぞ、おまえ」 「どうでもいい」 私は普通にそう答えた。 かわいげがないと人はいう。 かわいげをつくるとぶりっこと人はいう。 私はそんな生き物なのだと自分を理解する。 男にもてはやされ、かわいいと言われればそれでいい。 友達? なにそれ? 彼氏? めんどくさーい。 恋愛? 恋に焦がれはしています。 今日も猫をかぶって、いろんな男にかわいこぶって。 幸せって…なんだろう? 恋や友情に幸せなんてあるの? 目の裏に見えるは、茜が見せた幸せそうなその顔。 なんだか一生、私には巡りあうこともないような気がする。
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