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私は私なりに、モテるためには研究熱心だ。 雑誌やエッセイの受け売りでもいい。 とにかく男の目だけを気にする。 だって、モテたいじゃない? ちやほやされて、かわいいって言われるとうれしいじゃない? 男と一言にいっても、貴弘くんのような単純な人もいれば、弓削くんのように簡単ではない人もいる。 簡単ではなければないほど、私はどうすれば、その簡単ではない人を落とせるのか興味を持つ。 たいした美貌もない顔を、少しでもかわいく飾って、かわいくもない中身が顔に出てしまわないように、表情の練習。 服の好みなんかも人それぞれだろうけど、すべて男からの目線思考。 私は貴弘くんと待ち合わせをして、今日はデートである。 つきあうことを考えてはいなかった私。 誘ったのは貴弘くんだ。 待ち合わせ時間、少し早くにその場所にたどり着く。 貴弘くんはまだきていない。 短いスカート、かわいこぶった色づかい。 パステルカラーで、甘く柔らかい感じ。 茜がどういう私服かは知らないし、貴弘くんの好みも知らない。 だから大人っぽいよりも、かわいい感じにしてみた。 気に入ってもらえるといいんだけど…。 「上坂さん、ごめん。待たせた?」 声をかけられて気がつくと、貴弘くんが私に近づいてきていて。 「いいえ。…少し、デートだと思うと恥ずかしい…ですね」 私は貴弘くんの私服姿を見ると、その姿をまじまじと見ることなく、少し視線を下げる。 恥ずかしい…とは思う。 並の貴弘くんが少しばかりかっこよく見えてしまったから。 「貴弘くん、私服、かっこいいです」 私ははっきりとそれを口にして。 恥ずかしそうに笑う貴弘くんに笑顔を見せる。 すべてがすべて、私の計算通りなんてことがあるはずもない。 つきあうつもりはなかったのに、私はどうやら貴弘くんの彼女だ。 悪い気はしないけど、よくもまぁ、こんな私を彼女にしてくれるものだと思う。 貴弘くんには私の猫が見えていないのか? それとも、その猫が好きなのか? 貴弘くんの好みを知るのは、なぜか難しい。 「上坂さん…も、かわいいよ」 かわいいと言われるとうれしい。 そのためのがんばりだ。 お世辞でもいい。 誉めて称えて、私を持ち上げてくれればいい。
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