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ただ、私はまだまだ経験不足だったらしい。
あれ買って、あれ奢ってとかわいくおねだりして、貴弘くんとのデートを満喫して、その帰り。
「少し、寄り道していこう?」
「どこいくんですか?」
私は貴弘くんの腕に手をひっかけ、貴弘くんを見上げる。
「んー、とりあえず歩いてみる?」
貴弘くんは私に笑顔を見せて、私は貴弘くんに合わせるように、彼が歩くほうへただついていった。
高架下の公園なんていう、暗くなるとあまり人も近寄らないところへ連れていかれた。
その公園にいたのは、貴弘くんの友達の先輩方。
あぁ、まったくもって単純じゃなかった。
気がついても遅い。
「おぅ。貴弘」
「彼女連れてデート?」
先輩方は偶然のように声をかけてきて、私はまだ少し懲りずに、笑って頭を下げる。
逃げ出す機会を見るけど、走って逃げたら、ただの追いかけっこだろう。
男にとっては狩りか。
狩猟本能刺激して、余計に楽しみそう。
「貴弘くん、友達と会うためにここに寄ったの?」
「…そう思う?」
「待ち合わせしていたのかなって。先輩方と一緒に遊ぶなら、あっちのほう歩きません?」
私は繁華街のほうを指さして。
何もわからないふりをしてみた。
けど、遅いのはわかりきってる。
「下手な演技しなくていいよ。茜ちゃんから聞いた。上坂さんはただの男好きだって。オレを弄んで楽しみたかった?」
貴弘くんは言って。
私は表情をつくることをやめて、ぼんやりとそんな彼を見上げる。
相手を傷つけたら倍返し。
たぶん、そういうことだ。
いつか痛い目にあうと、弓削くんは言っていた。
いつかなんて、遠い話でもなかった。
私は抵抗なく、3人の男に囲まれて。
かっこいいと思ったのは本音ではあったのに、なんだか絶体絶命だ。
まぁ、いっか。
弄んだのも事実。
別れさせるつもりはなかったなんて、貴弘くんにとっては言い訳にしか聞こえないだろう。
惚れさせるのは、なかなか難しい。
私は一人におさえられて、二人に体をさわられる。
私をおさえるのは貴弘くんだ。
「抵抗しないの?」
「…しても同じでしょ?もう、どうでもいい」
私は貴弘くんにそう答えた。
かわいげ見せても、見せなくても。
恨まれるばかり。
おもしろい。
私は小さく笑った。
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