幸せ

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高校も2年目になれば、なんだか慣れきったもの。 毎日、同じ。 『いつも』が繰り返されるだけ。 つまらない。 つまらない、その毎日に刺激が欲しかっただけ。 別に興味なんてなかった。 私にとっては、ただの軽い遊び。 「ユリ、一緒に途中まで帰ろう」 私に笑顔で声をかけてきたのは、茜。 同じ中学ではあったけど、茜と話すようになったのは、高校2年になって同じクラスになってからだ。 どこにでもいる、明るくて人懐っこいかわいい子が、私の茜に対する印象。 私は茜と教室を出て、なんでもないような、学校での愚痴とか、そんなものを話しながら昇降口へ向かう。 「そういえばユリって彼氏いるの?」 「なんで?」 私は突然聞かれたことに、そう聞き返す。 「恋バナ、したいなぁって。彼氏できたから、ユリに聞かせて自慢したいっ」 茜は満面に笑みを浮かべて、本当にうれしそうな顔を見せる。 そこまで親しくもない友人に、そういう話を聞かされても、おもしろくもない。 けれど…。 「聞いてみたい。キスした?」 私は茜のノリに少しのってあげた。 そこからは、もう茜の口を塞ぎたいくらい、ひたすら彼氏自慢が始まった。 知り合ったきっかけ、告白したのは茜から。 初めてのキス、その状況もかなり詳しく。 はっきりいって、どうでもいい。 女友達っていうのは厄介なものだ。 どこまでつきあえばいいのかわからない。 とにかく、どうでもいい。 興味ない。 適当な相槌入れて、聞いてあげているふりをして、半分聞き流す。 だけど、まぁ、その呆れながら聞いていても、幸せそうに話す茜を見ていたら、嫉妬というか、妬ましくも思ったりもする。 うらやましいという羨望はない。 どうでもいいから。 きっと、今、私が思っていることを口にすると、茜は笑顔で謝るのだろう。 それさえも、どうでもいい。 なのに、こうして一緒に学校から帰る。 わざわざ自転車を押して歩きながら、その話を聞くように。 こういうつきあいも飽きていた。
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