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恋という名の遊び。
モテたいとは思うけど、すべての男が私に跪くはずもない。
猫をかぶっていれば、かわいいとみんなに見られるはずもない。
中学でそれは理解した。
それでも私は男の前では猫をかぶる。
それはもう、かなり分厚い猫を。
かなり冷めた私を感じさせないほどに。
「やぁだ、もう。そんなこと言わないで」
私は同じクラスの男の腕にスキンシップを取りながら、かなりぶりっこしてみせる。
そのスキンシップの手を払われた。
まぁ、こういうこともある。
いや、あって当然。
貴弘くんが単純で優しいだけだ。
貴弘くんが簡単だっただけだ。
「おまえ、ぶりっこしすぎ。気持ち悪い」
さっきまで笑っていたその男、弓削くんは私を不機嫌に見てくる。
私はさてどうしようと考えることもなく、更に猫をかぶったまま、しょぼんとしてみせる。
「本当、気持ち悪い」
弓削くんに同意の言葉を見せたのは茜だ。
その目は私を睨むように見ていて、私はやっと気がついたかと内心、笑いそうになりながら、しょぼーん。
だって、誰かに嫌われたってどうでもいい。
茜に嫌われても、別に友達でもなかった。
弓削くんに嫌われたところで、男は弓削くんだけでもない。
私は冷めている。
もうかなりの勢いで。
じゃなかったら、人間関係、もっとうまくやろうとするだろう。
それくらいの演技はかませる。
演技でしか人と向き合えない。
「人の彼氏に手を出しておいて、なにその態度っ?あんたが本気で普通に先輩とつきあうなら許せるっ。でも、あんた、誰にでもぶりっこかまして気に入られようとしてるじゃないっ。本気でムカつくっ!」
茜は私に本音でかかってきた。
今にも泣きそうになりながら、私を強く睨み付ける。
貴弘くんのことが本当に好きだったのか。
茜の言い方は貴弘くんをかばっているようにもとれる。
私が思うに、茜がそれを口に出すのは、明確な何か、…茜が貴弘くんにフラれたからだととれるのだけど…。
別れたか。
別に別れなくてもいいのに。
貴弘くんだって、どうせすぐに私に飽きるはずなのに。
だって私は本音で接していない。
あのキスの甘えは少しばかり本音だったけど。
あとは偽りの自分しか見せていない。
そんなもの、どうせすぐに飽きる。
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