Tantrum ball

6/10
前へ
/1076ページ
次へ
「タンタン?」 女児は小首を傾げた。 「そうタンタン(Tantrum ball:かんしゃく玉)って呼ばれてる。本当の名前はわからないんだ。」 自分の出生はおろか人種すらわからない。 人はイングランド系だとかアジア系だとか言うが、彼女にとってはどうでも良いことだった。 確かなのはセルビアの戦地で生まれ、物心つくまでは牧師に育てられた。 親が誰かなんてわからない。 育ての親である牧師も既にこの世にはいない。 辺りは夜の帳(とばり)が迫っていた。 雹の降る曇天がそれを一層早めている。
/1076ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5327人が本棚に入れています
本棚に追加