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後ろを振り向くと、助けてくれた人と目が合った。
「……って、遥ちゃんやないかい!」
助けてくれた恩人は、町人の格好をした山崎だった。
「遥ちゃん、こんなときに出歩いちゃいけへんで」
「こんなとき?」
遥は首を傾げる。
それを見て山崎はため息をついた。
「聞かされてないんか。遥ちゃんが死にそうになったのになぁ……」
悲しそうな表情の山崎に頭を何回も撫でられる。
(山崎さんて私のこと子ども扱いだよね……)
「ところで何しとったん?」
「納豆を買うために納豆売りを探してました」
「そうかそうか、納豆はいいから帰ろうな」
そう言われて逃げられないように腕を捕まれ、急いで屯所へと帰されてしまった。
「副長、言っとかないとあかん。さっき遥ちゃんが荷車に引かれるところやったんで」
山崎が土方に言うと、悪い悪いと土方は苦笑いをした。
「忙しくてな、これから戦になるかと思って色々と準備をしていたところだ」
「戦?戦が始まるんですか!?」
大声で叫ぶと、土方にうるさいと叱咤される。
「京に長州が攻めてくるって噂だ。多分確実に長州は来る」
「京はどうなるんですか?」
「戦場になるに決まってるじゃないか」
当たり前だと言っているようなそんな表情をする。
遥は唇を噛み締めた。
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