禁門の変

3/22
3890人が本棚に入れています
本棚に追加
/1079ページ
後ろを振り向くと、助けてくれた人と目が合った。 「……って、遥ちゃんやないかい!」 助けてくれた恩人は、町人の格好をした山崎だった。 「遥ちゃん、こんなときに出歩いちゃいけへんで」 「こんなとき?」 遥は首を傾げる。 それを見て山崎はため息をついた。 「聞かされてないんか。遥ちゃんが死にそうになったのになぁ……」 悲しそうな表情の山崎に頭を何回も撫でられる。 (山崎さんて私のこと子ども扱いだよね……) 「ところで何しとったん?」 「納豆を買うために納豆売りを探してました」 「そうかそうか、納豆はいいから帰ろうな」 そう言われて逃げられないように腕を捕まれ、急いで屯所へと帰されてしまった。 「副長、言っとかないとあかん。さっき遥ちゃんが荷車に引かれるところやったんで」 山崎が土方に言うと、悪い悪いと土方は苦笑いをした。 「忙しくてな、これから戦になるかと思って色々と準備をしていたところだ」 「戦?戦が始まるんですか!?」 大声で叫ぶと、土方にうるさいと叱咤される。 「京に長州が攻めてくるって噂だ。多分確実に長州は来る」 「京はどうなるんですか?」 「戦場になるに決まってるじゃないか」 当たり前だと言っているようなそんな表情をする。 遥は唇を噛み締めた。
/1079ページ

最初のコメントを投稿しよう!