禁門の変

5/22
3889人が本棚に入れています
本棚に追加
/1079ページ
「三木、なんて顔してるんだ」 悔しさともどかしさと、色々な感情が入り交じった表情。 そんな顔を稽古に行こうとする斎藤に見られてしまった。 「眉間にシワを寄せるんじゃない。跡がつくぞ」 そう言われて斎藤に親指で眉間をぐりぐりされる。 「長州と京で戦になるんですよね?私は留守番なんて嫌です」 「副長に言われたのか。戦などお前が出る場ではない」 斎藤に言われるが納得がいかない。 「こんな私だって出来ること」 「三木っ!!」 斎藤が遥の言葉を遮る。 斎藤の表情は怖かった。 「三木、分かるよな?戦がどんな場所か」 「……」 分かってる。 言われなくても分かってる。 「それでも戦に行くと言うならば……」 斎藤は刀を部屋から持ってきて、遥の前で刀を抜いた。 「三木、いくらお前でも斬るぞ」 「脅してるんですか?」 「そうでもしないとお前は言うこと聞かないだろ?」 遥が黙りこんでいると、斎藤は優しく微笑んだ。 「三木には待ってて欲しい。待っててくれないか?」 「斎藤さんの………………馬鹿っ!!」 斎藤は目を丸くして立ち尽くし、立ち去る遥の背中を呆然と見ていた。
/1079ページ

最初のコメントを投稿しよう!