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「戦いたい」なんて言葉は、私なんかが軽々しく言ってはいけないのは十分承知だ。
皆に反対されるのは当たり前だ。
自分は戦えるほど強くないし、足手まといになりかねない。
でも、自分にはこのミサンガがあるのだ。
池田屋で斬られた時だって、すぐには自分の体に戻れなかったが助かった。
今回ももし斬られたとしても助かるかもしれない。
戦うことは出来なくても、伝達や炊事ぐらいは出来るはずだ。
ほんの少しだって手伝える気がする。
「遥ちゃんも留守番?」
真後ろから消え入りそうな声が聞こえた。
振り向くとそこには沖田がいて、悲しそうに微笑んでいた。
「私、戦に出れないんだって。土方さんに言われた」
沖田の目は揺らいでいて、信じられないと訴えている。
「こんな体だから使えないんだよね。病にかかってしまうほど柔な体だから」
「沖田さん……」
「暇だからさ、遥ちゃん一緒にいてよ。お願い」
遥が黙っていると、沖田は草履を履き始める。
「どこへ行くんですか?」
「必要のない自分がどこへ行ったって、必要ないんだから大丈夫でしょう?」
戦に出れない事がどれだけ沖田にとって辛いことか。
新撰組にいる意味が分からなくなった沖田は、いつもと違う様で何だか怖い。
「山崎さん!沖田さんを止めて下さいっ」
「無駄だよ。山崎さん、土方さんに呼ばれてたから」
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