恋文

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遥は笑顔を浮かべ、後ろを振り向いた。 「斎藤さんっ!!」 遥は笑顔を浮かべて振り返る。 何故ここが分かったのか疑問がたくさんあるが、今はどうでもよかった。 遥が斎藤の所へ行こうと一歩踏み出した時、乃木が強く腕を掴んだ。 「俺のほうが幸せにしてやれる。お前みたいに死と隣り合わせじゃないからな!!」 遥さんの腕を離してしまったら終わりだ……。 なんとかしなければ。 遥さんはあいつの所へ行ってしまう。 「餓鬼のくせに随分強引な手を使うんだな」 斎藤は鼻で笑った。 「餓鬼だと……?」 「お前が奪うなど言える立場じゃないだろ。どっちに行くかは全て……三木が決めることだ」 乃木は唇を噛み、悔しそうな顔をする。 「自分のものに出来なかったから恥だとでも?」 「……っ!」 『恥』という言葉に、乃木は嫌そうにする。 そして遥の腕を離した。 「恥だ……」 「やっぱりまだ餓鬼じゃないか。親の顔をうかがって……」 遥は乃木の心情がやっと今分かった。 乃木は遥を好きになろうと、誰を好きになろうとどうでもよかったのだ。 親に何か失敗すると『恥だ』と言われていた乃木は、失敗することを恐れていた。 遥とぶつかったあの日は、見合いなどしないと嫁を貰えないのかと馬鹿にされたのだ。 だったら嫁を見つけてくると言って駆け出し、最初に出会ったのが遥だった。
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