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肌寒い二月の風が、拠り所なく立ちすくむ二人に吹き付ける。
雲の隙間から僅かに零れ落ちる日差しは余りにも心許く、その身を暖めるには圧倒的に熱量が不足していた。
寒さを凌ぐのならば建物の中で待っていれば良かったのだが、少女の「ここに居たくない」という言葉に同調して僕達は屋外へと出てきていた。
交わす言葉も無く、呆然としたまま時間だけが過ぎていく。
不意に担当者から事が完了したと伝えられて、その白く佇む建物へと重い足取りでゆっくりと歩きだす。
遅れて後に続く少女に普段の面影は見当たらず、泣き腫らした顔は俯いたままで、僕と繋いだ手をギュッと握りしめている。
そんな少女に対して優しい言葉すら掛けられなかった僕は、ただ一言「行こうか」と呟く事しかできなかった。
その瞬間、ゴウッという音と共に突風が吹き荒れる。
強さを増す凍てついた風に煽られて、その呟きが揺らぐように火葬場の片隅へと消えていったように僕は感じていた。
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