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開く事の無かったドアが開かれ、久しぶりに太陽の日差しが室内を照らす。
毛布にくるまって横たわっていた僕は眩しさに目を細めた。
その逆光の中に人影が浮かぶ。
一瞬だけ両親が戻ってきたのでは…、と淡い期待が心を満たした。
「悠ちゃん!!」
その人は僕の名を呼びながら、真っ直ぐに僕へと駆け寄る。
泣きながら「遅くなってごめんね」と繰り返し、ギュッと抱き締めてくれたのは伯母だった。
親類との付き合いが殆ど無かった家庭だったが、伯母だけは僕を心配して月に一度は我が家を訪れてくれていた。
この日も、僕の様子を伺う為に来てくれたらしい。
今更ながら、一瞬でもあの両親に期待した自分の甘い考えに嫌気がさした。
それから数日後、数少ない親類が集まって僕の引き取り先について話し合いが行われた。
なんだかんだと理由を述べる大人達。
それはそうだ。
全く関わりが無い子供等お荷物以外の何物でもない。
そんな中で真っ先に僕を引き取ると言ったのは、やはり伯母だった。
大人達の言葉に憤慨し、僕の為に泣いてくれる人がいる。
この人が母親だったら…、そう思うと胸が痛んだ。
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