第一章 嵐、来たる

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「……あ……!」 駄目だ。こんな時に限って声が出てくれない。せめて大声で叫ぶことが出来れば、兄貴が「煩いぞ」とか言いつつ、来てくれると思うんだけど……。 まさかこの家は訳あり物件だったのか? 俗に言う、座敷わらし? う、うおぉ……。 何でよりによって俺の部屋に出んのさ! 「何を驚いているんだい? 僕は君をずっと前から知っているのに」 そう言い、徐々に近付いてくる少年。まさかの死亡フラグ? どこぞのホラー番組に投稿出来る勢いだぞ、こいつ。 つーか、 「知ってる……?」 やっと声が出た。 消えてしまいそうな小さな声だけど。 「うん。僕は君を知っている。そうだね、例えば君が十年前の記憶が無いのも知っているし、好きな女子のタイプも知ってる」 前言撤回。こいつは座敷わらしじゃなくて、悪質なタイプのストーカーだ! 好きな女の子のタイプはともかく、俺が十年前の記憶が無いのは家族しか知らない筈だ。 親父によると交通事故に遭ったんだとさ。要は昔も今も運が悪いってこと。 まったくもってツイてない。 それ以前に、 「……誰?」 こいつは俺を気持ち悪い程に知っているようだが、俺はこいつと初対面。 ……座敷わらしと面識がある人間なんざ早々いないと思うけど。 「そうか。まだ君は僕の名前を知らなかったね」 少年は宙を仰ぎ、言葉を紡ぐ。 「僕の名前は“カエルム”。改めてよろしくね、秋斗君」
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