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右に曲がれば、コンビ二まであと少し。
足が弾む。
心弾む。
角を曲がり、視界が開ける。
弾む僕の足は停止した。
人、だ。
人がいる。
ダウンジャケットを着ているのと、明かりが乏しいせいで、男女の区別ができない。
でもそこに、確かに、質素なビニール傘をさして、独りぼっちで立っていた。
深夜という時間帯。
人が独り。
立ち尽くす。
不自然に思えたが、僕のような奴がいるのだから、こんな狭い路地に独りでいたって別におかしいことは何一つ無い。
そう思い直して、僕は一瞬止まった足を、再び動かす。
コンビ二に向かうため、前方にたたずむ人を横切る。
僕にとっても。
その人にとっても。
認識としては、記憶に残ることもない通りすがりの人――になるはずだったんだろう。
「……ねえ、ねえ」
響くアルト。女性の声だ。
呼び止められた。
なぜ。
こんな冴えない男子高校生が、女性に呼び止められた。
「?」
疑問符しか出ない。
通りすがりの人になるはずじゃなかったのか?
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